2016年10月17日月曜日

理語のイワン

 リパライン語と云うのは、数千年のうちにちっぽけな地方言語から、世界言語へと成り上がり、民族間の補助語にまでなりあがった言語である。他民族がリパライン語を話すうちに、民族名を知るまでが面倒で、民族を在る名前や命名方式でそれを代替するという語法が古ユナ後期までに口語で発達した。こういうわけで、ロシア人を指すときにイワンと茶化すように、こういった表現方法を理語論的には理語のイワン(理:Ivanergel)と呼ぶことにした。
 それで、当の理語のイワンは古ユナ以降どうなったかと云うと、第一次社会主義ユエスレオネなどの時代を通して、民族名を適当に呼ぶのは民族協和的なユエスレオネとしてどうなんだろうといった考えから廃れていった。以降理語のイワンを使って或る民族の人(の集団)などを呼ぶ場合は、軽蔑のニュアンスがこもるようになった。

  • ユーゲ人:fhasfamangg(なんとかマング)、fhasfanal(なんとかナル)
  • ヴェフィス人:fhasfai'a(なんとかイア)
  • セベリス人:fhasfanask(なんとかナスク)
  • パイグ人:kwa(クア)
Ex)
Fhasfamanggass sniejus fal fgir cun harmie? あそこになんとかマングたちが集まってるがなんでだ?

 余談だが、理語にはivane(イヴァネ、イヴァーネ)という名前が存在するが、これはイヴァン、イワン、ひいてはヨハネなどの地球の名称とは関係なく、語源はivaと形容詞語尾-enである。日本語で表すと「楓ちゃん」というあたりだ。
 例えば、リパコールさんの妹であるアレス・ラネーメ・イヴァネなど、リパライン語では男女問わず一般的な名前なのでリパラオネ人の理語のイワンはイヴァネになるのだろう。

《追記》
(2018/9/30)
リナエスト人に関しては、tictyktt-i [ʦiʦ̚ʦikʦi](羽や綿)の発音が非常に特徴的なのでこれを輸入したzizzi(ss)で表現することにする。

(2019/4/11)
以下のツイートを見て、リパライン語だったらどうなるかなあと思ってこれを参照した。恐らく、ivaneであることは間違いないが名字で迷った。結局、昔に廃れた名字からクレオス・ド・メアパトロネストの王"ter.taler"から取ることにした。Aflicazanでも良いなあと思ったがterはTの現代文字名に当たるのでより架空的・匿名的になると考えた。Ter.ivaneがリパライン語の山田太郎ということになった。

2016年9月13日火曜日

犯罪国ショアン、獣人傀儡政権一味への加担に鉄血の制裁

【レーシア8月21日発共和国中央通信】共和国報道省のスポークスマンは、本日領空境界周辺を飛行していたショアン空軍機二機をファルトクノア空軍機が撃墜したと発表した。
 これはショアン王国に対する感情的な軍の暴走であるなどと、わが共和国を狙ったとんでもないデマが流れているが、精神統制不能と化した犯罪諸国の陰謀的言論は全くの事実無根であり、狂信的獣人思想傀儡政権一味に加担した反革命的帝国主義国家ショアンへの無慈悲な鉄槌であると喧伝した。
  反革命的帝国主義国家ショアンは、我々が国家の統制と惑星スラーン及び大宇宙社会における共和と平安の道筋において、完全なる悪の軸となりつつあるが精神統制不能と化して、正しい物事の理解が出来なくなっている帝国主義の傀儡ショアン王42世は、報道機関を通して「わが国やミルドネジア含むスラーンの諸国のNZWP戦争は世界の終末を早める。」とほらを吹いた。これは、世界的な悪徳者としての犯罪的正体を隠し、我が共和国に擦り付けることによる欺瞞工作に過ぎない。
 街中のファルトクノア人は異口同音に「祖国と連邦を愚弄し、卑屈で屈辱的な態度を表したショアン傀儡一味は死んで当然。共和国はやはり正義の国。」と発言しており、ファルトクノア人民の屈辱を晴らしたファルトクノア空軍の戦闘機パイロット・レイヴァー三等空尉は我等がラヴィル同志に迎えられ、首相官邸にて蒼軍死線健闘勲章を授与された。

2016年8月26日金曜日

机戦関係

Ansourner……先手
Direrger(Deg)……後手
Avir……局面、棋譜の場面
Fedirrgavir……棋譜
Paltau……マス
Nertrleiju……縦軸
Ektirrleiju……横軸

Laver……駒
Elses……成る
Afnar……駒を取る
Anenk……駒を動かす、打つ
Steij……駒が効いている、刺さっている、駒で取れる範囲である

semorko……飛び越す(sue1 mok1)、ダイヤモンドする
Veleser semorko……跳び越す(基準となる)駒、踏み台
La fonti'a semorko……飛び越え判定
Voklisol……(持ち駒)役
Tymorko……こいこい、続行
Paltauil(1,2,3,4)……季節(春、夏、秋、冬)

En tamkot……皇地(tam kot:皇草)に入る
Kacel……皇地から出る
En tamnua……皇水(tam nua)に入る
Tirkjar……皇水から出る
La fonti'a tamnua……皇水判定
Fiurmergal……皇水の端のこと

Stodup leiju……筆を横に動かす
Vynut lartajip……皇将のこと

Xelol(宣言はxel)……王手、チェック
larpyc……詰む、チェックメイトする
Girtliskol……千日手

keke……はじめの挨拶(kait kaik:良い戦いを)
tymor……こいこい、続行宣言(ty mok1: 再び行く)
taxt……季節を終わらせる、勝負宣言(ta xot1: 季節を終わらせる)
perzej……おわりの挨拶(pet2 et2 cei:星一周す)

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Elmer……兵
Felkana……船
Xastir……巫
Stistyst……虎
Gustuer……弓
Vadyrd……車
Dodor……馬
Kua……筆
Varxle……将
Ales……王
Tam……皇

Alsasnej……無抗行処
……将而光在
……和皇神力
……光戦之集
……皇論之集
……行行
……国風
……虎馬
……全終之抗
……闇戦之集
……声無於前

Als dejixece……全類
Dejixece lace……類友
Lace……友

Xolo……反故
Larpyco……与終

2016年7月27日水曜日

理語フォネティックコード

リパライン語の

フォネティックコード

を作った。
主にリパラオネ教の神族、人の名前、一般名詞から取ってきている。

T hame Tarf
K hame Keintel
X hame Xturga
S hame Skarsna
Q hame Qerl
N hame Nakrapt
V hame Velgana
F hame Fyra
M hame Malegerl
Fh hame Fhasfa
D hame Dexafel
G hame Gern
P hame Polto
B hame Blirba
Vh hame Vhenseu
H hame Haltxeo
J hame Jungkar
C hame Carxa
R hame Restu
Z hame Zesto
Dz hame Dzosnir
W hame Werlfurp
L hame Lena
Y hame Yszaplorca
A hame Ales
I hame Iuesleone
U hame Ulastirze
E hame Eleno
O hame Olys

Ph hame philerl/phupurca
Ts hame tsans
Ch hame chai
Ng hame angvirl
Sh hame shrlo
Th hame tharmperl
Dh hame dhafarl
KH hame khanxas
Rkh hame va'rkhiny'al
Rl hame acirl

2016年7月4日月曜日

Loznej暫定単語群

これは古い単語郡です。
新しいのはこちらを参照ください。

大きい giji
小さい navi
多い dhozu
少ない munu
高い ityi
低い sudu
美しい minyi
かわいい minyi
良い boku
悪い ranyi
安い munu
長い ghari
短い cetyi
明るい nenyi
暗い duzu
暑い codu
熱い codu
寒い piki
冷たい khiki
暖かい codu
~である celaj
食べる najaj
言う salaj
教える ghanyaj
行く thakaj
作る lamaj
死ぬ dhajaj
見る fijaj
書く catyaj
聞く memaj
読む dukaj
押す dokaj
低く el lonveny(?)
私 nij
あなた nor
彼 lajsi
彼女 lajsi
私たち r'nij
あなたたち r'nor
彼ら r'lajsi
これ si
それ si
あれ si
言語 loz
発言 sal
呟き sal tityi
人(民)→吸血鬼? laj
物 sol
事 sol
部屋 mok
家 geny
学校 luzhal
何 khar
なぜ d'khar
どうやって el gh'khar
どこ vekhar
どれ khari
いつ khikhar
感謝 r'dhe(?)
na 正しい、はい
ak 違って(動詞と共起)
vi 鳥(?)
nej 国民(to laj khanyi munu ak celaj nej)
tity solkaliの鳥
solkal(i) kukkaliな事
r'- 複数
gh'- ?
d'- ?
meny 名前
niji 私達の
seji d'~ ~それ自体(?)
kov d'~ 非~?
sol celaji ~であるところのもの
boku n'khi <動詞の修飾形> するより良い
r'dosol (品詞名?)
r'do be, cany, dhe, faji, ghalではないもの
r'kap リンゴ(?)
el~el 単語の並列
d' (与格?)
dhenyaj 分る、理解する
fam celaj かどうかわからない
khany 国 国家(?)
c'pany 日本
sinyaj 知る、既知である
avaj 持つ
khak 牙
reny 国
ghal いいえ
cem 例
lody 文、一文
el ~と~、副詞節を作る(?)

・意味不明頻出単語
khavi
fam : nor ak sinyaj celaj. ak celaj. el nor salaj fam celaj.
lody
gh'- sol ranyaji lajruk
be <動詞> 希求・疑問(?)

2016年6月22日水曜日

蒼葵方言例文

・原文
言語は人類にとって文化の産物であり、文化を形成する重要な一部分です。
言語の多様性が失われるということは、その地方の個々の風土・自然環境などを適切に表現する方法が失われるということにもなります。

単にその地方の文化が失われるだけでなく、認知科学や自然科学の研究にとっても大きな損害となり得ます。言語多様性の重要性について学び、考え、言語を文化遺産(知的遺産)として認識し、保全して行くことが重要です。

・正式表記
言語ゐ人類しじゃ文化じゃ産物在りゃち、ゐ文化形成しゃ重要え一部分在りゃん。言語じゃ多様性しゐ失ゐことゐ、ゐそじゃ地方じゃそれぞれじゃ風土・自然環境など適切せき表現しゃ方法ゐ失われりこと在りゃん。

単せきそじゃ地方じゃ文化しゐ失われれだけし終われぬり、認知科学や自然科学じゃ研究ねせも大きえ損害しゐ成れよ。ゐ言語多様性じゃ重要性学べしち、考えしち、ゐ言語、文化遺産ね認識せしち、保全せ在りゃことしゐ重要在りゃん

・音声
http://tts.imtranslator.net/Yv4D

2016年6月14日火曜日

アルヒトの銃

大切に扱っていた愛銃が壊れてしまった。この街では身を守るために銃が必要というのに。護身用の小銃を納屋に置いたままであるのに、昨日鋤を取り出すときに気付いた。夜中銃を愛でていると、撃ちたい衝動に駆られて近所の野良犬を撃ったら狂ってマガジンが空になるまでぶっ放し続け、しまいには銃身がひん曲がってしまった。ああ、お向かいのご近所さんの玄関がボロボロ。まあ、この街ではよく在ることだ。誰の所存など、気にするものは居まい。この街の誰もが言う言葉に次のようなものが在る。

「銃は消費するものだ。」

そういうわけで、この街では身を守るために銃が必要なわけだが、わざわざ闇市場まで出て行かなくてはならなかった。面倒だが、命には代えられない。前行ったところと同じところに行くと、店主がにやけ顔で出迎えてくれた。

「また着たのか。」

「銃が完全にぶっ壊れちまったから、寄ったんだ。」

そういういうと店主は笑いそうになるのを堪えながら、店の中に案内した。店の中には凄い数の銃火器が揃えられており、この銃規制の国でどこから仕入れたのか全く分らない銃ばかりだった。
店主は外国製らしき珍しいフォルムの猟銃を愛で、おどけながら、私にこういった。

「外国の銃は凄いらしいぞ。リロードしたり、弾を撃つ事が出来るらしいぞ。」

私も店主におどけながら答える。
「そうか、それは幾らなんだい?」

「そんなものはこの国には無いぞ。」
警官が店の入り口に立っていた。銃を構えて、自分達を威嚇している。店主は怯えて裏口から逃げて行ったようで、自分も急いで裏口から逃げようとする。しかし、その瞬間無慈悲に銃声は鳴ったのである。


こうして、私は逃げることに成功して日記を書いているわけだが、私が無傷で銃を向けた警官から逃げられた理由としては警官がこの国で銃を撃ってしまったからだろうと思う。

2016年6月6日月曜日

【理訳】アルヒトの手記 - Alhjite'd starsdirxes

長年使っていた椅子が壊れてしまった。軽くて丈夫で扱いやすかったので重宝していたが、少し乱暴に扱ってもいたし、今まで私の身体を支えてくれたことに改めて感謝した。

 Liaxu aleron lex lus pernal elx edixa snuvod. Mi tisod penxeno fal la lex mels la lyes adit anka, lussyken pa elx edixu mi lus normtaonashoj la lex. Mi mak slaxers la lexe'c virlio'sci lixer'it.

とはいえ、私の生活に椅子がないのは大変不便であったので、似たような椅子を買おうと思い、翌日隣町まで赴いた。いつもは近くの家具屋で適当に見繕うのだが、以前友人から聞いた店の話を思い出し、そこに行ってみようと思ったのだった。

Mal, xeu'd nurun io mi tydiest mele'd marla'l fua dosyt pernal xale la lex fai mi tisod eso sietivo'st filx pernal i fea ny penxen. Mi tydiest diepojastan fai yst kenis senosto'i la lex fal nestil ban mi jui dosyt fal mele'd lopuden diepoj.

その店の外装は綺麗と言えるものではなかったが、その中は案外片付いていた。どこかで嗅いだことのあるような、安心する匂いがした。店主に椅子を探している ことを伝えると、まさに私好みの椅子を持ってきてくれた。どうして私の好みが分かったんですかと尋ねると、店主は自慢げに笑いながら「こんなボロい店が何も無しに続くわけなかろう」と答えた。
 Tisodanerfe ycax fal laxy filx diepojastanen ny leskcalirz es niv stidisn nes. Mi lusarkes fon la niurn. Mi jostol melferto pernala'it i diepoisilarta'l mal diepoisilarta letixerlst pernal zu es mi'd lirfenasch. "Harmie co firlex mi'd lirfenasch?" Mi nun la lex mal diepoisilarta kacklemiejon lkurf tea ny la lex. "Fqa xale penulupe diepojasta zel niv filx snalu."

結局、その椅子を買って帰った。玄関を開けると、壊れた椅子 が壁にもたれて待っていた。長年の友と別れるのが惜しくて、しばらくの間そのままにしておくことにした。元々狭い部屋がより一層狭くなってしまった。物が 捨てられないのは私の悪い癖だが、今回については誰も責めてくれないでほしい。
 Mi dosyt apaskenj la lex mal edixa mi dostisle. Snuvoden pernala's snoipe'l nololon mili mi fal stisniev. Aler mena'it fankeno m'es tuvyj, mi torln la lex fal fhasfa. Lystetal vatimel is lystetal. Niv ysevo p'es mi'd niukirname cis, elx lecu narto melsj fhasfa tirfa niv plax.

2016年5月30日月曜日

デュイン方言考 ~敬語の消滅と挨拶の変化~


デュイン方言には敬語が存在しない。これはリパライン語を含むシアン語族においては特段別に珍しいことではない。しかしながら、リパラオネ語派リパラオネ諸語に含まれる言語と方言においては大体の言語はluを基とした敬語が存在している。これは古リヴァライン語やエタンセンス語、クワク方言においても存在している。だがしかし、デュイン方言には存在していないのである。

・ユーゴック語の影響を受けたデュイン方言
デュインに入植した外国人のうち非リパラオネ系で一番多かったのがユーゲ人であった。大体のユーゲ人は教育を受けて、リパライン語もある程度話せたが敬語の概念があまり受け入れられなかった。というのはユーゴック語には明確な敬語表現が存在し無いからである。丁寧で綺麗と表現される上流方言は存在しているが、しかしこれはスカルムレイや高級シャスティに限った口語変種であるため、一般民やそれほど上位と言うわけでもない入植ユーゲ人は喋らない。標準的なユーゲ人のユーゴック語には敬語が存在しないのである。これに影響を受けたデュイン方言は敬語表現の回数をどんどん減らしていた。クワク方言にも存在する敬語表現であったが全国でのユーゲ人リパライン語の影響を強く受けて唯一の敬語であるluはデュイン方言では消滅した。

・挨拶の変化
 デュイン方言の挨拶は多彩である。古理語から引き継いだ時間帯ごとの挨拶、ユーゴック語に影響を受けた挨拶、現代理語に影響を受けた挨拶など色々なものが存在している。

Salar novar
  一般的、現代理語のsalar(<salarua)から来ているが標準口語とは違い敬語が無いために、誰に対しても使える。

Dzarmuermercn
 ユーゴック語のjeemusnから来ているが全て理語の単語の要素(dzar-m-ue-r-merc-n)である。少し砕けた表現である。

La zu es vynut (la nukucol/nysiest/nukus) ja
 それぞれおはよう こんにちは こんばんわであるが、これはユーゴック語のHe je raz chor, usnから来ている表現である。南洋方言で主に使われている。北洋方言ではそれぞれxufirua(shuphapi), afirua(ahuphaphi), nufirua(nhuphaphi)と言う。

 

2016年5月26日木曜日

デュイン方言考 ~意思主格と非意思主格~

デュイン方言には他のリパライン語方言には存在しない意思主格と非意思主格が存在する。

・意思主格と非意思主格
それぞれ-'sと-'cを利用する。デュイン方言における与格は-'lに変わって、向格は古標準口語を起源とする-skiになっている。意思主格と非意思主格の根源はリナエスト語族の能格言語などを見るとシアン祖語やエタンセンス語に関係したものと思われる。外面から見るとリパライン語とは全く違う格の意味になってしまっているように見えるが、そもそも古標準口語では助格詞が古リパライン語から弱化し続け、-'cと-'lがioに同化しようとしていたと言う記録がある(Fafs'd larter lkurftless kranterl, 2013). そもそもの標準口語において-'cと-'lが混同され始めた時期にデュイン方言が形成され、標準口語では-'cと-'lの用法がそのまま曖昧になって格組みになったのに対してデュイン方言では-'lに与格が統一され、非意思主格の分裂に-'cが当てられるようになった。
意思主格と非意思主格はその主格を取る主語の対象が意思を持って行なったことなのか、それとも偶然に起こったのかということや対象がそもそも意思をもてるのかという事を表す。

・例文
動詞fankenに対して主語vyrle/meleerで「冬が過ぎる」と「隣人が去る」という文を作る時標準口語では次のようになる。
Vyrle fanken.
Meleer fanken.
どちらも格としては無標であるが、主格で区別はしないのである。デュイン方言では以下のようになる。
Vyrle'c fanken.
Meleer fanken.
以上のようにデュイン方言では無意思のvyrleの主格には-'cを使っている。このようにしてデュイン方言は標準口語よりも動詞の意味を固定する格組みを別の方向で発達させているとも言える。
ただ、この区別は文字表記上での区別で、音声上では-'sも-'cも同じ/s/でもはや第二世代以降のデュイン人についてはもう既に意思主格と非意思主格の区別は意識にも上がっていないのかもしれない。というのはデュインで方言理語教育を受けた人間でも意思・非意思の表記の使い分けを間違えるのである。もはや、-'sと-'cの使い分けというものはデュイン人にとっては伝統・慣例・慣習に過ぎないという段階である
ただし、デュイン北洋の地方ではこの使い分けが顕著に残り、格接辞が-'seu/-'ceuという風に区別されている。

デュイン方言考 ~概要~

リパライン語にはデュイン方言という方言がある。
デュイン方言はデュイン全体7億を超えるデュイン全体で喋られるリパライン語口語の変種である。デュイン方言は方言とはいうがユエスレオネ本土において話されるアル・シェユ方言より標準語と異なっている点が多い。かといって、ラネーメ・リパライン語やアイレン方言ほどの変化をしていないという丁度良い位の離れ方をしている。

デュイン方言の特徴としては「古い表現が残っていること」、「標準口語と違って敬語が無いこと」、「接置詞に格支配がある」というところである。

・デュイン方言の発達
デュイン方言はデュインへの入植が発生しなければ生まれなかった言語である。デュイン戦争が終結し、ユエスレオネのデュイン開拓により本土から低所得者のユエスレオネ人がデュイン入りした。他にもハタ王国から出稼ぎに来た低所得者や一攫千金を狙った資本家、それに追従してトイター教を守ろうとした宗教家などがデュインに流入することになった。
デュインでは第一次ユエスレオネ社会主義時代では開拓労働と呼ばれる粗悪な労働環境での重労働を主にした計画労働が敷かれており、共産党から出向させられた現地指導者によってそれが行なわれていた。現地指導者は大体クワクの出身であったため、DAPEまでに消滅したクワク方言を口語で主に話した。クワク方言はエタンセンス語やリヴァライン語に近い古理語という感じであり、標準口語を話す本土から来た低所得者はおろか、ユーゲ人などの非リパラオネ人系には通用しなかった。このために標準口語を基層にクワク方言の要素を吸収して行ったのがデュイン方言の始まりであった。
デュイン方言はクワク方言だけでなく、入植外国人のユーゲ人を中心に非リパラオネ人系の表現や単語を積極的に取り入れて行った。このため標準語よりユーゴック語起源の単語が多い。
デュイン方言の発達はショレゼスコによる第二次ユエスレオネ社会主義への突入によって落ち着いた。ショレゼスコによって現地指導者はデュインから撤退、各県の自治力が上がったためにそれぞれの民族語が重視されるようになったが、外国人系デュイン人二世以降の多くがデュイン方言を第一か第二言語として話すこと、デュイン入植者自身がデュイン方言が自分たちのアイデンティティであるとしたためにデュイン総合府を挙げてデュイン方言をの維持・記録を推進している。

・デュイン方言と社会
 デュイン総合府からはデュイン方言はデュイン全土で通用するリパライン語変種であるとの評価をしており、ユエスレオネ連邦理語学士院も同様の評価をしている。ユエスレオネ人から見るとデュイン方言というのは日本人の標準語に対する関西弁に近いものである。リパライン語話者の総数に食い込むほどの話者数を持つため、ユエスレオネ本土にいてもデュイン方言の話者と出会う事がよくあるが、普通本土ではデュイン方言ではなく標準口語で話している。ユエスレオネ人もデュイン人も方言に対して崩れた言葉、洗練されていない野粗な言葉と考える事は無く、逆に本土人は方言に対して憧れを持つほどである。デュイン人が本土でデュイン方言を話さないのは単純に効率が悪いからというだけの問題である。